私がフィギュアスケートを見れない訳

 私がフィギュアスケートを見るのをやめたのは、2010年に開催されたバンクーバー五輪だった。いわゆる、浅田真央選手とキム・ヨナ選手が熾烈な競い合いを演じていた時代だ。
 決勝のフリーの時は、職場を抜け出して、近所の喫茶店で観戦したのを覚えている。
 結果はご存知の通り、キム・ヨナ選手が金メダルを獲得した。難度の高いジャンプを軽々と楽しそうにこなす彼女の滑りは、見ていて安心感があり、007の楽曲に合わせた最後のポーズを含めて、多幸感のある内容だった。
 一方の浅田真央選手は、高難度のジャンプに果敢に挑戦していき、一挙手一投足、指先からエッジまで、緊張感が漲るスリリングなものだった。しかし何より印象に残っているのは、身に纏う悲壮感だ。
 先に滑っていたキム・ヨナが、世界最高得点を叩き出したことを彼女が知ったのは、滑走直前だったはずだ。十九歳の女の子が背負うには、あまりにも重すぎた。
 そして私は、画面を通して伝わってきたその重さに耐えられず、それを最後にフィギュアを観戦することから離れた。

 私はあらゆるスポーツの中で、フィギュアスケートは最も残酷な、業の深い競技だと思っている。速さや距離、高さを競う陸上競技などは、その結果は明確だ。コンマ単位でどんなに僅かでも相手を上回れば勝者となる。
 しかし、フィギュアを含むいくつかの競技には、芸術点(現在の演技構成点)という項目がある。芸術点、という言葉が既に、芸術の定義から外れているように思えるこの項目は最初からあったものではない。

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二足歩行を止めたとき、人はどこへゆくのか

 齢を重ねるにつれ、なんでもない場所で躓くことが多くなった。ちょっとした段差のある歩道で足を取られる。半年ほど前のことだが、夜道を小走りで急いでいたところ縁石の段差に気づかず大転倒をした。転びながら(あ、これは頑張らないほうがいいな)と諦めたのが良かったのか、ひどい怪我はしなかったが、齢と人間の二足歩行がいかに不安定なものなのかを身をもって実感させられた。

常に倒れている? 二足歩行の利点

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スパイダーユニバース終了に想う

 スパイダーマンユニバースが終了するという報道があった。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ef4ec89cc241f24cb7117832086c73757353cae9

 もともと年頭に公開された「マダムウエッブ」が不評であったことや、そもそも本体ともいえる(?)MCUも右肩下がりのなかで、「クレイヴン・ザ・ハンター」が「マダム」を上回る低調が予測されることがダメ押しになったようだ。

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ジャニーズの記者会見を見て メディアはどう応えるのか

ジャニー喜多川前社長の性加害問題を巡り、昨日、ジャニーズ事務所が会見を開いた。それに応じて出された、テレビ局の声明をスポニチがまとめている。

https://news.yahoo.co.jp/articles/c28a3d7accf4774784a74b830ce634940508f5f2

どれも概ね、今後については「注意深く見守っていきたい」とし、問われているメディアの責任については「真摯に受け止め」「今後の活かしていきたい」といったところだ。

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本当に「クレージー」なのは誰か

立嶋篤史選手が登場する「クレイジージャーニー」という番組を観た。
51歳という年齢で、いまなお現役キックボクサーであることが「クレイジー」である所以だ。

番組では全盛期の華麗なキャリアから、不幸な交通事故による長期のブランクからの復帰、さらに私生活での離婚や男手一人で育てた息子さんの家出などが紹介され、立嶋氏を知らない人間でも十分感情移入できる構成になっていた。
しかし、クライマックスで放送された立嶋氏が目標としてきた100戦目の内容は、想像以上に危険を感じさせるものだった。
動きに力はなく、防御も不安定で、最後は最終ラウンド残り1秒のところでパンチに倒れTKO負けとなった。

立嶋氏はMCを務める松本人志氏の古い知り合いであり、番組の背景には松本氏を含む、「人はいつ引退するのか」「引退はいつ誰が決めるのか」というテーマがあったのだろう。私はもう20年ほど松本氏が登場する番組を観ていないので細かな事情はわからないのだが、以前から氏が自分の引退についてインタビューや著書などで触れていることは知っており、それはやはり「天才」と呼ばれた人の悩みどころなのだと思う。

松本氏は番組で「引退は自分が決めるもの」とする一方で「俺の場合は相方がいるから」と発言していた。
その上で、キックボクサーである立嶋氏の場合は、普通の人に比べると特殊だ。仕事をするためには、第三者が提供するリングと、自分を物理的に倒そうとする対戦相手が必要だからだ。

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