立嶋篤史選手が登場する「クレイジージャーニー」という番組を観た。
51歳という年齢で、いまなお現役キックボクサーであることが「クレイジー」である所以だ。
番組では全盛期の華麗なキャリアから、不幸な交通事故による長期のブランクからの復帰、さらに私生活での離婚や男手一人で育てた息子さんの家出などが紹介され、立嶋氏を知らない人間でも十分感情移入できる構成になっていた。
しかし、クライマックスで放送された立嶋氏が目標としてきた100戦目の内容は、想像以上に危険を感じさせるものだった。
動きに力はなく、防御も不安定で、最後は最終ラウンド残り1秒のところでパンチに倒れTKO負けとなった。
立嶋氏はMCを務める松本人志氏の古い知り合いであり、番組の背景には松本氏を含む、「人はいつ引退するのか」「引退はいつ誰が決めるのか」というテーマがあったのだろう。私はもう20年ほど松本氏が登場する番組を観ていないので細かな事情はわからないのだが、以前から氏が自分の引退についてインタビューや著書などで触れていることは知っており、それはやはり「天才」と呼ばれた人の悩みどころなのだと思う。
松本氏は番組で「引退は自分が決めるもの」とする一方で「俺の場合は相方がいるから」と発言していた。
その上で、キックボクサーである立嶋氏の場合は、普通の人に比べると特殊だ。仕事をするためには、第三者が提供するリングと、自分を物理的に倒そうとする対戦相手が必要だからだ。